2017/06/20

1271【東京駅周辺まち歩き独断偏見ガイド3】頭の上の空気をあちこちに販売して保全修復費用を捻出した「2012東京駅」

 【東京駅周辺まち歩き独断偏見ガイド2】からつづく

 では、東京駅を丸の内の側から眺めて考えましょう。
 まわりが超高層ビルなのに、なぜ、ここだけが3階建てなのでしょうか。JR東日本はよほどお金があるので、超高層に建て替えて不動産で儲けようという気がないのでしょうか。それともおカネがないので、昔の姿に改修するだけにしたのでしょうか。
中央に見える東京駅赤レンガ駅舎だけが低層3階建ての建築なのは何故か

 でも、聞くところによれば、この改修するだけでも500億円もかかったとのことです。文化財保全のためとは言いながら、その衣装代というかお化粧代というか、その巨額事業費を運賃だけでまかなうことが可能なほど、JR東日本は儲けている企業なのでしょうか。それならば、貧乏人としては運賃を下げってもらいたい。

●赤レンガ東京駅は身売りして500億円稼いだ
 実は、低層3階建てにしても超高層にしたのと同じ不動産活用の方法を、ここで発明したのです。
 それは超高層のにするところを3階までにして、そこから上空の空気を周りのビルに売って金にしたのです。空気を売るって、なんともすごいですねえ、キツネもタヌキもビックリの換金術です。
 500億円かどうか知りませんが、とにかく超高層を立てたと同じになる仕組み発明して、JR東は稼いだのです。発明とは言いすぎですが、そう言う法制度が新たにこのために作られたのでした。
 まあ、考えようによっては、もとは国鉄の土地、つまり国民の財産でしたから、それを有効に活用したのはよかったと思いましょう。貧乏人のわたしとしては、運賃に還元してほしいけどなあ。
東京駅赤レンガ駅舎はその上の空気をこの6か所のビルに売ったので
周りを超高層ビルで囲まれて谷底になってしまった

 具体的に言うと、このあたりの土地の上にはその土地を敷地にして建物を建てると、敷地の13倍の床面積まで建てることができるように、都市計画で決めています。この13倍のことを専門用語で「容積率」と言います。
 つまり、敷地いっぱいの建物だと地上13階建てのビルになるのです。それをまわりを空けて広場にしたり、文化施設を作ったり、駐車場をつくると、実際には15倍以上建てられますから、20階建てや30階建ての超高層ビルになるのです。

 この東京駅は3階建てですから、13倍のところを2倍くらいしか使っていないので、残りの11倍くらいに相当する床面積を、近くの他所の敷地に売ったのです。つまり、身売りですね。これで事実上は13倍建てたと同じことになるわけです。

3階建て東京駅でも超高層なみ不動産経営できるカラクリ
 上手い仕組みですね、これを専門用語で「容積移転」と言います。どこの土地でもできるのではなくて、東京駅から丸の内や有楽町あたりだけに、特例的に許可されている制度です。
 いまのところ日本中で、このあたりにしか許可されていません。この特例制度は、東京駅の低層保全のために作られたと言ってもよいでしょう。
JR東日本は東京駅丸の内駅舎敷地の未利用容積率を分割して
赤い矢印の先の各ビル敷地に移転して売却あるいは床取得した

 その身売り先は6か所に切り売りしています。これからもっと増えるかもしれませんが、その容積率を買った6本のビルは、自分のところの13倍の上に買った容積率を載せて建てるので、大きく高くなります。東京駅の周りが特に超高層群なのはそのせいもあるのです。
 たとえて言うと、6人のでっぷり太った大柄の旦那衆に身を売って得たカネで、衣装を買いお化粧直ししたのですね。そうしたら、それらの間に埋もれて文字通り日陰者になった東京駅姐さん、あ、こりゃ譬えがちょっとゲスかもなあ。

●後藤新平と辰野金吾、マッカーサとレーモンド、二人の伊藤滋
 さて、振り返れば、この赤レンガ駅舎の現地保全を決定した1988年の八十島委員会の報告書(東京駅周辺地区総合整備基礎調査報告には、こう書いています。
「丸の内駅舎は、長きにわたり国民に愛着のもたれる記念碑的建造物であり、また、本地区の都市景観を構成するランドマークとして評価されるため、現在地において形態保全を図る方針とし、今後、具体化に当たっては次のような点について検討するものとする.
イ 建物自体の耐力診断を踏まえ、形態保全の具体的な方法を検討するものとする.
ロ 土地の高度利用との調和については、駅舎の背後に駅舎の形態保全に十分配慮しながら新たな建物を建築する方法、駅舎の上空の容墳率を本地区内の他の敷地に移転する方法等により実施する.」
 この最後のくだりの容積率移転が、特例制度をつくることによって実現したわけです。この「本地区内」とは東京駅と隣接街区だけの範囲を意味していましたが、今の実際の範囲は丸の内、大手町、有楽町までの広い範囲で移転が可能になっています。

 この東京駅のための特例の新制度(特例容積率適用地区)を生み出す指導をしたお方が、都市計画家の伊藤滋さんです。ここにもまた伊藤滋さんの登場です。
 これって、建築家の辰野金吾さんが設計した「1914東京駅」を、マッカーサーが戦争で焼いて「1945東京駅」にしたのを、建築家の伊藤滋さんが「1947東京駅」に修復し、更にそれを都市計画家の伊藤滋さんが「2012東京駅」に作り替えた、こういうことになるのでしょうね。

 というわけで東京駅見物の最後に、独断偏見一覧表にしておきましょう。

では、そろそろ東京駅を後にして次に進みましょう。


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