2016/01/27

1169【横浜都計審(2)】サスティナブルとかスマートとかふわふわネームと言葉だけで絵がないから何ができるのかさっぱり分らない綱島SST地区計画

1168【横浜都計審】のつづき

 横浜市神奈川区の羽沢の相鉄新線駅前の地区計画に続いて、こんどはその鉄道が伸びていく先の、港北区綱島にできるアップル研究所の地区計画である。
 ところがこれも、なんだかわからない計画であった。

●サスティナブルでスマートなタウンの都市計画だって

 第1議題の「羽沢4丁目地区計画」に続いて、第2議題の「綱島サスティナブル・スマートタウン地区計画」であった。わたしには、これがなんとも分りにくい内容で、よくまあ委員の方々は理解できたもんだと、感心したのであった。
 普通の地区計画の名称は、その地名をつけるものだが、この妙なカタカナ名は地名ではなくて、よく言えば開発コンセプト、悪く言えば開発宣伝文句である。

 その場所は、昔々わたしはが住んでいた南日吉の近くだから、土地勘がある。綱島街道沿いに、松下通信工業と大きく書いた工場らしい建物があった記憶がある。
 それがパナソニックと名が変り、それが撤退して空き地になり、そこにアップルの研究所が来るとの新聞情報くらいは知っていた。その開発の地区計画であるらしい。
秦綱島駅は相鉄新線が羽澤から伸びてきてこれからできる新駅
跡地に研究所を建てるのに、どうして都市計画が必要なのかと審議会資料をみたら、どうやらアップル研究所だけじゃなくて、いくつかに土地分割して商業施設や郷土住宅を建てるから、その土地利用コントロール策らしい。
 といっても、こんなまとまった空き地だから、ちゃんとしたデベロッパーがいて、全体の開発計画を立てて、それをもって市に都市計画変更の要望でも出したのであろう。
 あのアップルのことだから、きっと素晴らしい都市デザインを見せてくれるのだろう。
計画地とその周辺地域

●要するに高さ緩和してほしいだけか

 そのデベロッパーが希望することは何かとしげしげと見たのだが、現況の用途地域はだから、ほぼ何の用途の建築でも建てられるし、容積率も準工業200%だから、研究所や商店あるいは住宅ならそれで十分だろう。
 そうか、高さ制限の緩和がほしかったのか。五種高度地区で上限高さ20mの現状を、共同住宅ビル(いわゆるマンション)のために、31mに緩和が狙いらしい。20高さの商業施設や研究所、そして31m高さの共同住宅が立ち並ぶらしい。

計画説明図はほかにもあるがこの2枚でほぼ分る範囲で、肝心の絵は無い

ところが、審議会資料のどこを見ても、全体開発の絵がないのである。地区計画の図や説明を読めば、開発後の姿がおぼろげながら頭に浮かぶが、絵がないからもうひとつわからない。
 そのカタカナ名の宣伝文句のような、すばらしい街の姿を、どうして見せないのだろうか。それが無いってことは、絶対にないはずである。第1議題では、絵を見せているではないか。それななのに、この議題ではそれを隠すのはなぜだろうか。
 また、審議会の委員たちはなぜ要求しないのだろうか。絵がなくても、この資料だけで分ったのだろうか。別室で見たのだろうか。

 この様な開発型の地区計画は、かならず開発計画図があって、それにそって地区計画を作成するものである。地区計画が先にあり、後から開発整備をするものではない。
 その実例は、最近問題になった新国立競技場が、ザハ・ハディド案に従って地区計画を作ったことからもわかる。

●このふわふわネームの実態はなんだろうか

 ところで「サスティナブル・スマートタウン」とは、いったいなんであるのか。土地利用の方針にいろいろ書いてあるが、具体的に何をどうやるのかさっぱり分らない。
 審議会委員2名から、具体的な実施内容と、方法、時期について明らかにするように質問があった。市長側からの回答は「事業者においてただ今協議中と聞いております」との返事であった。これではなんの回答にもなっていないのである。
サスティナブル・スマートタウンとはこれらしいが、、

 羽澤の場合もそうであるが、この開発と周辺地区との都市計画あるいは環境的な対応について、どこにも示されていないのである。
 例えば、南北で全く異なる土地利用だから、間に区画道路を入れる方がよいように思う。東側市街地の区画割にも順応するはずだ。それを屈曲のある歩行者専用通路としたのは、なぜか。
 都市計画とは言いつつも、敷地内整備ばかりで、公共施設たる道路や公園の提供負担はしていない。高さ制限緩和と引き換えに、敷地内地区施設整備を担保するための地区計画である。

 「建築物等の形態意匠の制限」に、気になる記述がある。
「建築物の屋上に設置する建築設備等(太陽光発電設備又は太陽熱利用設備を除く)は、建築物と調和した遮蔽物で囲む等乱雑な外観とならないようにすること
 これだと、「太陽光発電設備又は太陽熱利用設備」は、乱雑な外観でもよいのである。え、なぜ、これらは制限を免除されるのだろうか、理解できない。
 
 環境にナントカかって言えば、なんでも良いことみたいな浮ついた流行があるが、このサスティナブル・スマートというキャッチフレーズ名称も、その流行に乗ったのだろうか。
 流行ではない、本質的実体的なものだと言うなら、お題目だけではなくて、これによりこの周辺地域も含めてどれほどのエネルギー消費が低減できるのかとか、太陽光や太陽熱設備のある建築はこんなに美しいのだとか、具体的に示してほしい。

●地区計画やるなら開発後の街の絵を先に見せろ

 せっかくこれだけまとまった開発計画なのに、ふわふわネームと形式的図書ばかりで、肝心のこれは素晴らしいという未来の街姿を見せてくれない都市計画なんて、ケチというか形式的というか、どうしてこうなんだろうか。 だって、あのアップルでしょ、きっと素晴らしいデザインの街ができるでしょうにねえ、見せてくださいよ。
 都市計画なんだから、このサスティナブルでスマートな街は周辺地域を、どのようにサスティナブルでスマートな街にしてくれるのか、その辺もプレゼンテイションしてほしい。

 なんにしても、わたしがさっぱり分らなかったのに、委員はよく分かったらしく、原案通り可決したのが、どうにも悔しいことであった。
 いつの日か、これはすてきな絵だという都市計画を見せてくれる都市計画審議会になってほしい。
 思い出したが、わたしがこの審議会委員だった時、計画の前提に齟齬があったから私は反対したが、プレゼンテイションがすばらしくてよく理解できた議案は、磯子プリンスホテル跡地開発の地区計画であった。開発型の地区計画は、あれくらいの資料を出してほしいものだ。あれに比べるとこの議案の説明は、あまりにも手抜きである。       (議題3へ続く)
 
参照:横浜ご近所探検隊:横浜都市計画審議会
http://datey.blogspot.jp/p/blog-page_19.html

 

0 件のコメント: