2014/08/29

990・【横浜都計審傍聴2】横浜駅西口ビル計画の容積率大幅緩和はどうやってひねり出したのか

前回からの続きhttp://datey.blogspot.jp/2014/08/989.html

・巨大駅ビル計画登場

 JR横浜駅をわたしが使い出したのは、1970年くらいからだったろうか、それから現在まで、いつもいつも工事をし続けている。その中には駅西口にあるホテルや駅ビルの工事もあった。
1960年頃の横浜駅西口駅前風景
今、それらが取り壊されて、東急線が地下に潜る工事がやっと終わったと思ったら、またもや工事である。それらの跡地に巨大ビルの計画が登場した。JR東日本が事業者となる「横浜駅西口駅ビル計画」である。https://www.jreast.co.jp/press/2013/20140302.pdf

 新しい駅ビルができることには、わたしも歓迎するのだが、これを都市計画の変更を伴う計画とするには、いくつかの疑問点がある。もちろん、この疑問は先日の都計審傍聴において配布された資料のみによるのであって、それ以上の情報は知らないから、的外れかもしれないがが、市民はこれ以上は知りようがないのである。
 この駅ビル棟及び付属駐車場棟の二つの建築とそれらを結ぶデッキ歩廊という3つの建築物について、3つの都市計画を定めるのである。

 3つの都市計画とは、第1には都市再生特区による規模と外形の決定、第2には地区計画による用途と地区施設等の決定、第3には建築物建て替えに関連して生じる地下特殊通路の変更追加決定である。
 これらの中で最もドラスティックな都市計画決定は、第1の都市再生特区による、容積率の変更である。現行都市計画による基準容積率は800%であるが、この特別地区指定によって124%に上昇する。なんと440%も容積ボーナスが出るのである。
 こうして横浜る駅西口には、天理ビル(1973年、27階建て、延面積38000㎡、高さ102m、容積率1040%、特定街区)、相鉄ビル(2008年、28階建て、延べ面積69000㎡、高さ115m、容積率1100%、特定街区)につづく第3の最も巨大建築(26階建て、延面積94000㎡、高さ130m)が登場することになった。
 3つの都市計画の内、この都市再生特区について、先ず疑問点を書く。

現行の都市計画で容積率は800%、それが都市再生特区で1240%に!

・都市再生特区の容積率大緩和はどう判断して決めたのか

 都市計画は、文字通り都市を計画するのである。建築とその敷地のひとつひとつについて規定するものではない。少なくとも複数の街区や公共施設を対象にする。
 ところが、この駅ビル計画では、その敷地だけをとりあげて容積率を5割増し以上にしている。いわゆるスポット都市計画である。これが街区ではなくて、街区の中の一部敷地であることに注視する必要がある。西口地区の2つの著いう高層ビルはどちらも特定街区であった。
 街区の中の一部敷地でも容積割増ができるのは、普通では考えられないので、たぶん、都市再生特別措置法なるバブルパンク後の不良債権解消と景気浮上のために、2002年に作った特別法を使うからだろう。
 この法律による都市再生事業を行いたいからと、土地をもっているJR東日本と東急の鉄道2社が、横浜市に都市計画で都市再生特区を決めて、容積率割り増しをしてほしいと提案をした。
 それを受けた横浜市は、その提案の通りに都市計画審議会に諮問したらしい。
 そんな、おれんちの土地だけ容積率をアップしてちょうだい』、なんて提案が通るものなんだと、驚く。しかも、なにか社会貢献の良いことをするから、ボーナスちょうだい、ではなくて、なんにもしないけどボーナスだけちょうだいって、提案である。
 それも100%増しとかじゃなくて、440%増しだからもっと驚く。
 西口地区に建った二つの特定街区建築は、それぞれ1040%と1100%だから、この駅ビル計画の大盤振る舞い要求ぶりがスゴイ。
 
 どこをどうすれば、そのような巨大ボーナスを民間事業者が獲得できるのだろうか。
 都市再生特区の指定については、一律の基準にによることなく、一件ごとに審査して定めるとされているから、これもそうしたのだろう。そして、提案されたそのまま鵜呑みにして決めた、ってことでは、まさか、あるまい。
 だとすれば、都市計画審議会は、なぜこの容積率巨大ボーナスを与えるのかを、きちんと審議することが必要だろう。しかるに、なにも質問もなく、もちろん意見もなかった。委員は理解しているのだろうか。
 若干言い過ぎを承知で書くが、この民間事業者への特定利益供与のようにも思える。だって、JR東は居ながらにして、その所有地の利用価値が5割以上も上昇したのである。どんな公共的公益的な貢献があるのだろうか。

・この後に出てく建て替えでも敷地ごとに大緩和するのか

 横浜駅西口地区では、相鉄ジョイナスや高島屋の建て替えが報道されているから、そのほかの多くの老朽ビルも、次々と建替えするかもしれない。
 そのとき、うちの敷地も800%を1240%に緩和してくれと、それぞれから都市再生特区提案が出てくるだろう。
 公平を期するとして、駅前広場に面する建築はもちろん、西口地区一帯では提案が出るごとにひとつひとつ、どこの敷地でも都市再生特区にして1240%に緩和するのだろうか。
 あのあたりの昔の都市計画による貧弱な都市基盤が、それに耐えられるのだろうか。景観はどうなるんだろう。

 このあたりの疑問を、都計審には審議してほしかったのである。
 委員の方々はなにも質疑されなかったのは、なにか私の知らない事情をご存じだったのでしょうねえ、教えてくださいな。
 敷地ごとに都市計画を決めていては、これはもう都市計画を逸脱している。
 だから同時に決める地区計画で、そのあたりをうまく補完しているのかと思ったら、これも疑問だらけであるので、次回からそれを書く。 (つづく)

参照→989・【横浜都計審傍聴1】
http://datey.blogspot.jp/2014/08/989.html

参照→これまでの横浜都計審イチャモン弧乱夢

参照→●あなたの町の都市計画はこんな会議で決めている(要約版) ●本文版
https://sites.google.com/site/matimorig2x/essay-cityplanning
https://sites.google.com/site/matimorig2x/tokeisin

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