2012/05/22

623横浜港景観事件(4)幸せと愛の空間は教会と城郭と神殿にあるらしい

横浜みなとみらい21新港地区に計画中の結婚式場は、実は二つあると気がついた。
 いまの話題の結婚式場計画はこの図の新港地区16街区である。その隣の15と運河対岸の23街区の一部が遊園地である。もうひとつの結婚式場計画は11-2街区である。
   
 これら二つが同時に今年1月の都市美審議会にかかってきたが、11-2街区計画はほぼすんなりと通っている。
 つまり、赤レンガを貼った四角い建物なので、両側に既に経っている赤レンガの箱と調和しているのだろう(これじゃあミモフタモナイ言い方か)。

 ではと気になったのが、いまの結婚式場業界ではどんな建物が流行なんだろうか、と言うことである。
 では論より証拠、ホテルや既存キリスト教会はさておき、横浜都心部だけについて、わたしのご近所探検に引っかかる結婚式場らしきもの眺めてきたので、ここに紹介する(上の地図に場所を赤丸で示した)。

 みなとみらい21地区の北隣の似たような運河沿いの立地では、ポートサイド地区(金港町)に結婚式場がある。
 超高層ビルを背景に、なんとなく南欧風とでも言うのだろうか。前に水があって良い立地だが、景観的には特にまわりとの周到な関係を持ってデザインされたのでもないらしい。だから目だってよろしい、というのが事業者の考えだろう。
  

 ミナトみらい21の高島地区に、ギリシャ神殿風の結婚式場がある。こういうのは大きな庭の向こうに見え隠れしていればよさそうなものだが、車が行き交って騒々しい道端にいきなり建っている。
 その真後ろに丸い高層ビルが見えていて、その取り合わせにななかの妙味がある。まさか意識して建てたわけではあるまい。

 紅葉坂の上(宮崎町)に最近できた結婚式場は、ゴシック風教会とかロマネスク風とかいうのかよくわからないが、あれこれつきまぜ欧風デザインとでもいいましょうか。
 建築的には遠めには石張りかと思うが、近寄ってしげしげと見上げると、ほとんどが吹付け塗装である。
 吹き付け仕上げが安っぽいのは仕方ないが、それにしても夜目遠目傘の内のたぐいで、うまく作るものである。
 こういう類の建築の専門的なことについては、「結婚式教会の誕生」(五十嵐太郎)という珍書があるから、そちらに譲ることにする。
 
 その隣には結婚式場建築ではないが、伊勢山皇大神宮である。ここは神明造の拝殿と本殿があり、当然に神前結婚式を執り行っているだろう。
 もしかしたら、ここで神前結婚式を挙げて、隣で披露宴を行うってこともあるのだろうか。
 結婚式教会(五十嵐さんの命名で、キリスト教会ではなくて結婚式だけのための教会風デザインの建物)はあるとわかったが、日本の神様がいない結婚式だけの神社風建築もあるかもしれない。まあ、日本の神様はヨリシロさえあればどこでも降臨するがね。
   
 本町4丁目のペンシルビルとビルの間に、これまたペンシルビルのような時計塔のような赤レンガ仕上げの建物が建ち上がっている。これも最近できた結婚式場である。
 何様式というのか分らないが、天使の像がついていたり、ぺディメントがあり、胴にはコーニスが回っているように見せていたりしていて、あれこれつきまぜ欧風ではあるらしい。
  
 本町通りを更に東に進んで大桟橋への角(山下町)のビル壁に「・・・幸せウェディング」と垂れ幕があって、その向こうに巨大なドリックオーダー柱が4本も立ち上がった、なにやらギリシャ神殿風の高層ビルが建っている。
 あれ、ここにも結婚式場が建ったのかと見れば、幸せウェディングは垂れ幕のあるホテルの宣伝であって、神殿風は別のビルで幸福の科学という宗教団体であった。
 ふ~む、結婚式場と新興宗教は同じデザインコンセプトにあるのか。もしかしたら、その信者の結婚式をやっているのだろうか。まあ、「幸せ」の隣が「幸福」なんて、それはそれでよろしいのでしょう。
  
 そのすぐ隣ブロックに、大昔は「露亜銀行」だった建物が改装されて、いまは結婚式場となっている。
 これは1921年創建の本格的な様式建築で、イオニアンオーダーの柱や三角ペディメントを持った古典主義の意匠である。ペンキ塗りの見せかけではなくて、ちゃんと石を使っている。
 この建物は露亜銀行からドイツ領事館となり、法務省横浜入国管理事務所、更にまた県警の警友病院別館となり、県警の移転後は永らく空き家だった。
 それが、この地区一帯の再開発事業に伴って保存修復されて、つい最近のことだが結婚式場になった。
 これもやっぱり欧風建築だから結婚式場になったのか。面白いことに、この宣伝サイトには「90年の歴史を誇る」と建築の古さを詠っている。そんじょそこらに最近できた似非欧風建築の式場じゃないですよって、そういうことで差異をつけるのだろう。
  
 これらのほかにもたくさんのホテル結婚式場やらレストラン式場とか邸宅式場などがある横浜都心地区は、ブライダルマーケット激戦地である。
 そんなところに、ここで話題にしている新港地区の新結婚式場は乗り込んでくるのである。
 少子高齢時代となって結婚式場需要は縮小するのは常識の中で、このビジネスモデルが新戦略なのだろうか。
 80年代までのラブホテルがこういう戦略だったがいまは廃れたと、「愛の空間」(井上章一)なる珍書にある。
 面白くなってきたぞ。 (つづく横浜港景観事件(5))

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