2011/06/20

434横浜で琉球のゆったりとした時間

 沖縄のゆったりとした時間を、横浜で久しぶりに味わった。
 琉球王朝の芸能である「組踊」を、横浜能楽堂で観たのである。
 組踊をはじめてみたのはもう20年も前だったろうか、TVの「萬歳敵討」であった。その時は能「放下僧」とあわせて放送され、江戸武家文化と琉球王朝文化の交流を初めて知って興味を持った。
 能をベースにして琉球芸能と合体させたものが、組踊である。18世紀のはじめに、琉球王朝に仕える玉城朝薫が創作、演奏したのをはじめとする。

 実際の舞台での演奏を観る機会はなかなかなくて、10年ほど前だったか国立劇場で「執心鐘入」を観たのがはじめてであった。
 これは能「道成寺」のアレンジによるものだが、能がそぎ落としたケレン味のある演芸的な面白さをもっていて、興味深く見た。
 例えば、落ちた鐘が上がると中にいるはずの白拍子の姿は消えている。やがて宙に吊るされた鐘からさかさまにぶら下がって蛇体が姿を見せるのであった。
 その次に観たのは、沖縄に遊びに行ったときに国立組踊劇場であった。遊びの日程を劇場の日程に合わせたのである。
 その時見た演目は忘れたが、城を攻め落とすというような筋書きであった。

 今回は近くの横浜能楽堂で「首里の祝い」(2011年6月19日)と題する芸能である。出し物を書いておく。
・老人踊「かぎやで風」 老人:島袋光晴 老女:宮城能鳳
・若衆踊「四季口説」 金城真次、玉城匠
・女踊「かせかけ」 東江裕吉、新垣悟
・二才踊「上り口説」 田口博章
・独唱「赤田風節」 照喜名朝一
・打組踊「しよんだう」 美女:東江裕吉、新垣悟
・醜女:金城真次、玉城匠
・独唱「仲村渠節」 城間德太郎
・組踊「花売の縁」
 森川の子:親泊久玄、乙樽:宮城能鳳、鶴松:比嘉克之、
 猿引:嘉手苅林一、猿:古堅聖也、薪木取:島袋光晴、
 後見:金城真次・玉城匠
 歌三線:西江喜春・仲嶺伸吾・玉城和樹、箏:池間北斗、
 笛:宮城英夫、胡弓:川平賀道、太鼓:比嘉聡、
 立方指導:宮城能鳳、音楽指導:照喜名朝一

「花売りの縁」は能の「芦刈」に想を得た作品であるそうだが、わたしは「芦刈」をまだ観ていないのでなんとも比較できない。
 中で小猿を出すのは、狂言の「靭猿」によるのだろうが、「芦刈」にもあるのだろうか。
 能に想を得た組踊は他には、「女物狂」(能「隅田川」)、「銘苅子」(能「羽衣」)などがあるそうだ。

 能舞台での組踊ははじめてみたが、地謡座に奥から順に太鼓、筝、三線、胡弓、笛の順に座って演奏する。能のように地謡と囃子とは席が分かれていない。
 そして3名の3線演奏者が歌も担当する。
 ゆったりと抑揚のある音曲と歌三線が流れ、台詞もゆったりと歌うごとくである。
 
 能では舞いといって、踊りとは言わないように、原則として水平に様式的に動く。能のできた時代の演芸を取り入れていても、能の様式に変換してしまっている。
 組踊では明らかに琉球舞踊そのものであるらしく、踊りであるから手ぶり足ぶりは上下左右に自在に動く。
 能では装束は派手な色であっても、顔は仮面を使うし、使わない場合でも役者が化粧することはない。
 組踊の登場者のなんとまあ美しい化粧であることよ、本土の大衆演劇がそうであることをちょっと連想してしまう。
 多文化日本を思った。

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