2014/03/24

911人口減少に加えて南海トラフ巨大地震津波で日本列島人口大移動時代

 先年、世界遺産登録に失敗した鎌倉市で、あたらしい大規模小売店舗の建設計画が出てきて、いろいろと騒ぎになっているそうである。もし登録成功していたら、バッファゾーンになるはずの歴史的中心街である。
 わたしは鎌倉市民をやめて横浜市民になって11年余、その計画について具体的に何かを言う情報もないし、立場にもない。

 だが、その開発計画地の位置を見ると、おお、これは問題だよなあ、それは鎌倉だけじゃなくてほぼ日本列島の半分は関係する問題を含むなあと、気が付いたのである。
 そこは鎌倉の由比ヶ浜海岸近くである。由比ヶ浜とは、相模湾の一番奥にある海岸でああるから、次の南海トラフ巨大地震が起きると、真っ直ぐに巨大津波が襲来するのである。

 鎌倉には大津波被災の歴史的証人がいる。この開発計画地よりも内陸側にある高徳院というお寺に、雨ざらしで座る巨体の鎌倉大仏(13世紀半ば建立)である。
 実は、かつては大仏殿の中にあったのが、15世紀末の大津波で流された結果が、今の露座の姿であるという。
 計画地はそれより海側だから、必ず被災するだろう。もちろん、現に周りにいま建っている多くの住宅なども、もろに被災する。まさに津波被災予定地である。

 ところで今、東日本大震災の津波被災地の太平洋沿岸部の街ではどこもかしこも、津波被災した地区を居住禁止にして(津波災害危険区域指定)、住民を海岸から遠い津波が来ない高さに移動させる事業を進めている。
 一方で、鎌倉のような津波被災予定地では、そんなことはしていない(のであろう)。鎌倉だけではなく、藤沢でも静岡でも和歌山でも高知でも宮崎でも、たぶん、やっていないだろう。たぶん、津波が来て大勢死んだら、やりはじめるのであろう。

 津波被災地から外に移転させている東北や北関東の太平洋沿岸部の街でも、その跡地に住宅を禁止にしても、大規模商業施設のような集客施設の禁止はしていない。
 だから、こんどまた津波が来た時には、ここで買い物している人たち、働いている人たちは、またも被災するのである。
 このことは、まだ津波が来ていない鎌倉でも、今計画中の商業施設は同じことである。
 それでよいのかなあ、と、思ってしまう。

 考えすぎるかもしれないが、いま現在の太平洋海岸に近い津波予定地ににある施設は、住宅や病院、学校、福祉施設はもとより、工場も事務所も商店も、本来なら津波が届かないところに移転させる政策が必要なのだろう。
 もちろん、それには莫大な費用が必要だし、そのまえに生活基盤の大転換による社会的動揺が起きるだろう。
 しかし、今わたしたちは東日本大震災地、原発事故大被災地に、その動揺をまざまざと見つめみている最中である。あすはわが身と分かっているのである。

 まだその意識が熱いうちに、未被災地において次の津波被災への政策をとるべきであろうと思う。
 とすれば、当面できることは、津波被災予定地を定めること、そしてそのエリアでは新規開発を禁止すること、そのエリアからの移転に助成策を行うことだろう。

 もっと積極的に進めるならば、この津波防災移転にかこつけて、これから問題が顕在化する人口減少による地域問題の解決のために、国土全体の生活圏再編成を政策的に行うことである。
 あ、こんなわたしが思いつくようなことは、もう、とっくにやってるんだろうなあ、、。
 鎌倉のひとつの商業開発から、ここまで考えすぎたのであるが、さて、どうなるのだろうか、日本列島は、、、。

 積極的にその政策を、自治体内で完結させようと進めている三陸などの津波被災自治体では、いまや自治体の枠を超えて人口移動が起き、沿岸部で人口減少が進んでいる。
ということは、何の政策もなくて放っておいても、人々は自主的に海岸部から内陸部へと移転していくことだろう。太平洋沿岸の街の人口は、これから加速して減少するだろう。
 それとも、またすぐに忘れて、「湘南海辺の素敵な暮らし」なんて言い出すのだろうか。

 津波防災のための政策を何も知らないままもどうかと思うので、「津波防災地域づくり法」なるものを読んでみた。20111年12月にできているから泥縄であるが、わたしが考えるようなことが書いてある。
 まずは「津波災害警戒区域」の指定で、これは要するに津波被災予定区域のイエローゾーンであるらしい。あれこれ対策計画をする。
 つぎはレッドゾーンの「津波災害特別警戒区域」の指定である。なにしろ生命が危ない地域なので、ここに新たに住むことを禁止するのである。ここも住まいだけ禁止となっているが、それだけでいいのかと疑問になる。

 ということで、泥縄法だったが津波対応政策はあることが分かった。
 で、全国のどこに津波レッドゾーン指定をしているかウエブサイトで調べたら、なんとまあ、一か所もないのである。イエローゾーンさえも、徳島県が決めただけらしい。
 もう、津波がやってくる区域のシミュレーションはとっくに終わっているのに、なぜだろうか。もしかして、指定されると不動産価値が下落するだろうから、いろいろな方面から困ると言われて、指定足踏み状態なのだろうか。

 でもなあ、住民の勘で分るよなあ、お上に指定してもらわなくたって、このあたりは危ないって、。命が惜しいから逃げ出すし、今さらわざわざ住みに行かないよなあ。動物的勘というから、まずはネズミやタヌキが逃げ出すだろう。
 いまや日本列島は、人も狸も大移動時代を迎えているのである(ような気がする)。


●参照「復興計画の向こうにある次の災害への対策は」(伊達美徳)
https://sites.google.com/site/dandysworldg/sinsai-3nenme
●参照「津波防災地域づくり法」
http://www.mlit.go.jp/page/kanbo01_hy_002325.html
●参照「鎌倉市津波災害対策計画」
http://www.city.kamakura.kanagawa.jp/sougoubousai/documents/10_tsunami.pdf

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